サイトマップEnglish

食の新潟国際賞

受賞者メッセージ

受賞の言葉
大賞: 中村哲・ペシャワール会・PMS(平和医療団・日本)


村上 優 氏


中村 哲 氏

「食の新潟国際賞 大賞を受賞して」

村上  優 氏
(ペシャワール会 会長 / PMS( Peace (Japan) Medical Services )総院長)

食の新潟国際賞大賞を授かりました。医師である中村が農業、食の分野で栄誉を讃えていただくことを本当に喜んでいると思います。まさしくこの20年間は医療よりも農業の成立に身を捧げ、平和に家族と暮らすことができる世界を目指していたからです。
中村哲医師が当時のパキスタン北西辺境州ペシャワールで医療活動を始めたのは1984年の事でした。ペシャワール会は中村哲医師を支えて36年が過ぎます。「一隅を照らす」と彼の地に留まり続けました。ハンセン病撲滅計画の一翼を担い、貧しい地域での医療活動から人々の命を支える活動へ広がるには大きな転機がありました。その一つが世界の争いの縮図のように続いた戦火であり、また2000年から始まる大干ばつ、それは世界の温暖化による自然崩壊が最も弱い立場の人々に降りかかり、多くの飢餓状態から餓死者がでることが予測されました。薬よりも1本の井戸を、さらには生きる術は食料の供給、すなわち農業の回復であると灌漑用水路建設が始まりました。結果として2019年までにクナール川周辺の1万6千ヘクタールの耕地、65万人の生活を支える用水路網ができました。日本では江戸時代に確立された優れて地域性の濃い技術をPMS方式として現地に適して完成させ、今ではアフガニスタン復興は農業からと国を挙げて注目を集めるまでになりました。 中村先生の尊い犠牲は、改めてアフガニスタンだけでなく、貧困や飢え、困難な中で自立して生きていく人々に、当たり前のようにして手を差し伸べる大切さ、それを実行する人の尊さを世界に思いこさせました。
「緑の大地計画」は続きます。すでに絶え間なく水を供給して人々の生活を支えている用水路も、繰り返して手を加えなければ安定しません。また新たに伝統的工法を取りこんだPMS方式の取水口や用水路は広がりをみせていますが、まだ道半ばです。手掛けていた教科書ともなる「緑の大地計画」ガイドラインを完成させ、新たな灌漑事業、農業の復興モデルを広げていく礎を築かねばなりません。

佐野藤三郎特別賞: 大坪 研一 氏
新潟大学 自然科学系フェロー /
新潟薬科大学 特任教授

「食の新潟国際賞佐野藤三郎特別賞を受賞して」

この度、栄えある食の新潟国際賞の佐野藤三郎特別賞を授賞下さいまして、関係の皆様に対し、心より感謝申し上げます。芦沼と呼ばれた亀田郷を現在の美田に改良され、遠く中国三江平原にまで広大な水田の礎を築かれた佐野藤三郎先生のお名前を冠した賞を頂きまして、喜びに堪えません。
私は、農水省食品総合研究所、新潟大学および新潟薬科大学において、米の食味評価、PCR法による米のDNA品種・産地判別技術、機能性米加工食品の開発などに取り組んできました。新潟県作物研究センターの皆様とのコシヒカリの良食味系譜や他県産コシヒカリとの判別技術の開発などの共同研究は特に印象に残っています。
これまでに、国際稲研究所、米国農務省研究所等と共同研究を行い、JICAや国連大学を通じて、各国の研修生を受け入れたり、在外協力員として派遣されたりしてきました。最近は、中国黒龍江省農業科学院、タイや台湾の大学、韓国の農業センター等との交流が増えています。
新潟の各地域との産学連携事業、県産新品種「新之助」の食味特性の評価、米粉の用途開発や、新潟市食文化の推進、食の新潟国際賞財団など、様々な分野で、新潟地域の皆様とご一緒させて頂きました。特に、食の新潟国際賞財団の訪中団に3回参加し、佐野藤三郎先生のご業績を直に拝見し、訪中団に対する中国側の誠意あふれる対応に、中山先生始め、関係の皆様が研修生のご指導等の人的交流を継続してこられた歴史の重みを感じました。
今後は、この受賞を契機として、米に関する研究開発を続けるとともに、食の新潟国際賞財団等の事業に関わらせて頂く中で、佐野先生のご業績を若い世代に伝え続け、海外との技術交流や人的交流の推進に少しでもお役に立てればと思っています。
最後になりましたが、受賞に際し、古泉ファウンダー、池田理事長始め財団の皆様、唐木委員長始め、選考委員の皆様、推薦頂きました学長先生始め新潟大学の皆様、日本応用糖質科学会の皆様、中村澄子准教授を始めとする多くの共同研究者の皆様に心より御礼申し上げます。

21世紀希望賞: 矢野 裕之 氏
国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構
食品研究部門 食品加工流通研究領域 食品素材開発ユニット・ユニット長

「21世紀希望賞を受賞して」

この度は名誉ある賞をいただくことができ本当にうれしく思います。私にとって新潟はコメの研究を始めた土地です。大雪と格闘しながら子育ても楽しんだ思い出の場所で受賞式に臨めることは万感の思いです。
私が勤務する農研機構は、我が国の農業と食品産業の発展のため、基礎から応用まで幅広い分野で研究開発を行う機関です。基盤研究で論文を書くだけでなく、開発した技術を世の中の役に立つ食品として実用化するまで、これからも責任をもって研究に取り組みたいと思います。今回の受賞はそのための大きな励みになります。本当にありがとうございました。
直近の10年間はグルテンや増粘剤を使用しないパンの製造技術の開発に取り組みました。毎日毎日パン作りに試行錯誤し、時には重要なアイデアを提供くださった契約職員の方々のおかげで、ぺしゃんこだったパンが再現性よく膨らむようになりました。この技術を特許出願し、いくつかの食品関連企業に売り込みました。タイガー魔法瓶株式会社、株式会社ナチュラルフードは熱意をもって対応くださり、ホームベーカリーとパンの製品化に至りました。自慢できる素晴らしい商品です。また、広島大学と共同でこのパンが膨らむメカニズムについて共同研究を行いました。この産・学・官連携研究の全過程にわたって、農研機構の諸先輩方に暖かくご指導いただきました。
今、受賞にあたって当時を振り返ると、本当に多くの方々にお世話になったことを再認識いたします。基礎研究とその実用化の間には「死の谷」があるといわれます。これを一緒に飛び越えてくださった方々を思い、感謝の気持ちで胸が熱くなります。ありがとうございます。

地域未来賞: 江川 和徳 氏
江川技術士事務所(農業部門) 所長 /
元新潟県農業総合研究所 食品研究センター長

「地域未来賞を受賞して」

・受賞の喜びと今後の抱負
過日、食の新潟国際賞財団より電話をいただき国際賞の今年より新設の地域未来賞に内定したとの連絡をいただいた。最初何のことか分からずぽかんとした状態で、キツネにつままれた感じであったが、まことに光栄なことと喜びをお伝えした。今後、食の未来賞に恥じないように県農業・食品産業の発展に取り組んでゆきたいと今思いを新たにしている。
・これまでの研究を振り返り
食研退職後、座右の書としている元食研所長 故斎藤昭三氏の一筋の道に記されている21世紀の新潟のあるべき姿に資せるよう努めてきた。農工連携による新しい産業の道につながる取り組みとして食と健康をめざした。斎藤の教えの「魂は硬く、心は柔軟に」を胸に新潟から脳血管障害と胃がんをなくす食として今農産物の酢酸発酵利用に力を入れている。今後はユネスコ文化遺産の和食の原点、郷土食を新しい健康食として復活し新潟に健康食インバウンドをすすめ、農工連携、大小規模の多様な存続を可能とした消費者も最小支出で最大幸福の得られる、新しい時代の新潟の食の在り方を模索してゆきたいと思っている。