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食の新潟国際賞

受賞者メッセージ

受賞の言葉(各受賞者の職名は受賞当時のものです)
大賞:安藤 宏基 氏
特定非営利活動法人 国際連合世界食糧計画WFP協会 会長
日清食品ホールディングス株式会社 代表取締役社長・CEO

このたびは、栄えある賞を賜り、誠にありがとうございました。
国連WFP協会会長としてこのような栄誉ある賞を頂戴できましたことを、大変光栄に存じます。
選考に携わってくださった皆さまをはじめ、日頃よりご支援を賜っております皆さまに心より感謝申し上げます。
国連WFP協会は、飢餓のない世界を目指して活動する国連WFPの国内における公式支援窓口です。ただし、その役割は食を届けることへの支援にとどまりません。困難の中にある人々に手を差し伸べる大切さを伝え、寄付や支援を通じて、平和への責任や災害時の負担を分かち合う「共生」の気持ちを社会に広げていくことも重要な使命であると思います。
恵まれた立場にある人が、自らの幸せだけでなく、苦しむ人々の命と尊厳に思いを寄せる。その優しい気持ちが広がることで、飢餓は最小化できると信じています。
国連WFP協会が目指すのは、支援を続ける未来ではありません。飢餓のない世界を実現し、いつか自らの役目を終えられる日を迎えることです。その日まで、「共生」の心を育み続けたいと考えています。

佐野藤三郎特別賞:トリストラム・スチュアート 氏
Feedback(現Foodrise)共同創業者
Toast Brewing 創業者

佐野藤三郎特別賞を受賞することとなり、大変光栄に存じます。この思いがけない栄誉を賜りましたことに対し、選考委員会ならびに理事会の皆様に心より御礼申し上げます。
また、このたび評価していただいた活動は、世界中で多くの人々が力と心を合わせて取り組んできた共同の成果であることを申し添えたいと思います。私は過去30年にわたり食品ロス問題に取り組んできましたが、その間、世界で最も刺激を与えてくれる活動家、起業家、企業のリーダー、政策立案者、シェフ、農業者、政府関係者、そして国連環境計画(UNEP)や国際連合食糧農業機関(FAO)をはじめとする国際機関の方々とともに活動できたことを、大変光栄に感じています。
世界的なムーブメントを築くことができたのは、私がすべての人の心の中に存在すると信じている「仲間意識(companionship)」の精神があったからです。"Com" はラテン語で「共に」を意味し、"pan" はラテン語で「パン(食べ物)」を意味します。つまり companionship とは、「共に食を分かち合う精神」を表しており、世界中のあらゆる社会において、人々の結びつきや社会の一体感を育むために受け継がれてきたものです。それは、人々を結びつける食の力の象徴でもあります。私たちは食を分かち合うことで友情を育み、愛情の絆を深め、そして人類が母なる地球の恵みによって生かされているという根源的なつながりを認識するのです。
この賞をいただくことは、食品ロス削減に取り組むすべての関係者にとって、自らの努力が評価され、世界中の人々の共感を得ていることを実感できる大きな励みとなるでしょう。 実際、私の著書『Waste: Uncovering the Global Food Scandal』の最終章「希望の島々(Islands of Hope)」でも述べたように、私は、日本、そして日本人が大切にしてきた「もったいない」の精神こそが、食べ物の尊さ、さらには生命そのものの尊さを私たち一人ひとりに気づかせ、行動へと駆り立てる力を持っていると信じています。それは、私たちすべてが大切に守り育てる責任を負っている価値観です。
このたびの佐野藤三郎特別賞が、「もったいない」の精神、そしてその精神を体現し育んできた日本の人々の政策や実践に世界の注目を集め、日本文化を支えるこの大切な理念がさらに広く理解される一助となることを願っています。

21世紀希望賞:木下 政人 氏
京都大学大学院 農学研究科
応用生物科学専攻 海洋生物科学講座 准教授

私は、大学で水産に関わる研究を行っており、社会貢献したいと常々考えておりました。
この度、第9回食の新潟国際賞「21世紀希望賞」を賜りましたことは大変光栄であり、関係各位に心から感謝申し上げます。また、私の研究を多方面から支えてくださった方々にも、この場をお借りして感謝申し上げます。
近年、ヘルシーな食材として水産物が世界中で注目されており、世界中で養殖生産高が年々増加しています。一方、一時は世界一の水産大国であった日本では、小規模経営・高齢化・安価な水産物の輸入などのため、水産業が厳しい状態に追い込まれています。加えて、海水温の上昇など気候変動による打撃も深刻です。このような状況を打開し、日本の水産業(特に養殖業)を復興させるには高品質で独自性の高い養殖魚品種を作ることが必要です。
ところが、新品種を作り出すには従来法では10年単位の長期間を必要とします。ノーベル賞受賞の対象となったゲノム編集技術を活用することで、これまでの品種改良法と同様に外来遺伝子を挿入することなく、迅速に計画的に優良品種の作製が可能となりました。
これまでに私たちの研究グループでは、この技術(品種改良加速技術と呼ばれます)を用い、可食部の増加したマダイや成長が早くなったトラフグなどを開発し、商品として販売を開始いたしました。この技術は水産物だけでなく、農畜産物にも大変有効な手法です。
今回の受賞を励みに、今後も、国や地域を越えて連携し、新たな価値を創造し、未来の一次産業を支える研究成果や技術の開発に取り組んでいきます。

地域未来賞:松本 将史 氏
株式会社能水商店 代表取締役

この度は、第9回食の新潟国際賞「地域未来賞」を受賞し、身に余る光栄に存じます。ご推薦者をはじめ、これまで私の活動を支えてくださったすべての皆様に心より感謝申し上げます。
私の活動の原点は、新潟県立海洋高等学校(以下、海洋高校)の教員時代に地元の能生川を遡上するサケの有効利用を目指した取組です。最初は、産卵期サケ特有の臭気の研究を大学と共同で行う基礎的な研究をしていました。
しかし、その途中で授業の一環で鮭魚醤「最後の一滴」を開発すると、生徒たちの水産加工と販売を通じた職業能力と社会性の成長を支える基盤づくりが目標となりました。そして、海洋高校の外に生産施設と会計管理体制を整えることで、産学連携による実践的な専門高校の学びを持続可能なシステムとして構築することができました。
その後、高校教員を退職して産業界側から海洋高校の職業教育支援に関わることになりました。水産加工を学ぶ生徒たちの食品開発を完結させ、流通経路に乗るまでのサポートをしています。
また、サケの孵化放流事業を行う能生内水面漁業協同組合の代表として、新しいサケの放流方法「発眼卵放流」に水産増殖を学ぶ生徒たちと取り組むなど、地域課題を実践的な学びに昇華させる機会づくりも行っています。微々たるものではありますが、私が手掛けたまちの特産品や雇用の創出は、若者が産業の論理を実践的に学べる仕組みを追求した結果としての副産物だと思っています。
現在は、さらに効率的な職業教育が展開できる日本初の本格的デュアルシステム(職業訓練と教科学習を並行するドイツの教育制度)を導入した広域通信制サポート校「ライトシップ高等学院」を運営しています。
食品産業のみならず、多様な業種に高校時代から就労できるこの仕組みは、個人の自己実現追求と地域産業の人材確保を両立する教育インフラとして、新潟発で全国に広めていく予定です。
この度の受賞は、鮭魚醤「最後の一滴」から始まる教育と産業の融合モデルの価値づけと今後の挑戦の拠り所をいただいたものと感じております。これからのたゆまぬ努力をお誓い申し上げます。