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現場に居て指導をしていると、食べることに非常にストレスを感じている人が多くいると痛感します。
患者さんに正しい知識を身につけてもらうこと、毎日の食事をおいしく食べていただくことが私たちの仕事なのです。

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第8号 2011/04/14より (PDF/700KB)

全ての人に食べる喜びを~健康弁当と糖尿病フルコース食を通じて~
長谷川 美代 (新潟医療センター栄養科の管理栄養士・糖尿病療養指導士)


  ―まず、長谷川さんはどのような経緯で健康弁当を作られたのですか。

 最初のきっかけは、大学院への入学でした。その大学にいらした担当教授が、厚生労働省の補助金を得て勤労男性への栄養教育プログラムを開発・実践する研究を手掛けられるというので、研究協力者として参画しました。そのプロジェクトの中で、バランスのとれた健康弁当のレシピを考案し、実際に新潟市の男性職員に週3回、3ヶ月間で全36食を提供しました。そのレシピと実践内容を『弁当革命』という本にして発行したところ、問い合わせが殺到し、印刷した800部全て希望者にお譲りしました。それだけ世の中の関心が強いということですね。

―レシピを考案される際に工夫されたことはありますか。

 最大のポイントは、「食べておいしい」というところです。プロジェクトを実施する前に勤労男性グループを対象に行ったフォーカス・インタビューの中で浮かび上がって来たのは、「ヘルシー=おいしくない」「全体的に量が少ない、または品数が多くても一品ずつが少量」と考える人が多いということでした。ならば、そのイメージを覆す弁当を作りたい!と考え、「ご飯がおいしい・味のメリハリがある・それぞれのおかずをしっかり食べられる」ことにこだわったお弁当を作りました。本当においしくなるように、味つけにはとてもこだわりました。
 また、お弁当には毎回食事バランスガイドのいくつ分に相当するかの図と、弁当クイズ(回答は次回の弁当に記載)を配布しました。その結果、食に対する知識、行動、態度が改善するという変化が見られました。

―『弁当革命』を発表した後に何か変化はありましたか。

 レシピの中の「豚肉の味噌漬け焼き弁当」をセブンイレブンが商品化し、2008年11月27日から12月15日まで販売しました。このお弁当は他の商品に比べ単価が約100円程高かったのですが、他のお弁当よりも売り上げを伸ばし、しかも販売数が落ちなかったのです。普通、新商品が発売になると、最初は販売数を伸ばしますが、その後急激に数が減るというのが一般的なのです。ですから、価格が少し高くても、おいしければヘルシー弁当は買ってもらえると私は確信しています。現代社会では様々な事情から外食を選ばざるを得ない人が多くいます。食環境が整っていれば健康的な食生活を続けることは難しくないのです。ですから早く食環境が整備されることを強く望みます。

―話は変わって、勤務先では糖尿病患者のためのフルコース料理を提供していると伺いました。

 当院、糖尿病センターの患者会「スワンの会」の年間行事の一環で試食会というのがあります。そこで食事制限のある糖尿病の患者さんでも食べられる600kcalを目安にしたフルコース料理を提供しました。

―なぜフルコース料理にしようと思われたのですか。

 私は普段、糖尿病の患者さんの栄養指導をしているのですが、現場に居て指導をしていると、食べることに非常にストレスを感じている人が多くいると痛感します。糖尿病になると、味のない、少ない量の食事を食べなくてはいけないと考えると思いますが、一番重要なのは主食・主菜・副菜のバランスがとれているかどうかなのです。ですから、正しいバランスであればフルコース料理も食べられるということを知っていただきたかった。患者さんに正しい知識を身につけてもらうこと、毎日の食事をおいしく食べていただくことが私たちの仕事なのです。
 多くの人々が生活習慣病予防を必要としています。ですが、この活動は、栄養士が個々でしていては形になりません。もっと様々なフィールドの人々と連携し、産学協同でなければ成功しません。全ての人に「食の喜びを」知ってほしい、私はそう強く願っています。


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