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食の新潟国際賞財団通信

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藤森 文啓 氏
(東京家政大学家政学部環境教育学科准教授)

   1965年生。東京家政大学家政学部准教授。
 90年日本大学農獣医学部農学科卒業。92年日本大学大学院農学研究課農学専攻修士課程修了。同年以降、日本ロシェ(株)、理化学研究所で研究活動に従事。2004年4月、東京家政大学家政学部環境情報学科助教授に就任。現在、同大学家政学部環境教育学科生物工学研究室准教授。キノコの遺伝子解析研究、キノコ由来の二次代謝物の抗がん活性研究などキノコ研究に打ち込む。
 東京理科大学勤務の01年、学位を取得。論文多数。共著多数。近著に「室内環境学概論」(室内環境学会編)。
 日本分子生物学会及び日本農芸化学会所属。
 趣味はバラ。中でもサントゥールロワイヤルという品種の香りが最高だという。
 信条は、「希望ではなく、願望で突き進む。」
 千葉県船橋市在住。


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第5号 2010/07/07より (PDF/439KB)

第一回 食の新潟国際賞 21世紀希望賞 受賞者紹介

   東京家政大学准教授・藤森文啓氏は、ゲノム科学を専門とする研究者である。

 藤森氏は、「雪国まいたけ」と玉川大学関連ベンチャー「ハイファジェネシス」との共同で、マイタケ、エリンギ、ブナシメジ、シイタケ、マツタケの遺伝子解析をし、そのデータベースを構築した。

 従来、キノコの品種開発や効能は、試行錯誤や経験、伝承的なものによるところが大きく、そのため、産業や健康応用などの利用において科学的検証がなく、研究・開発が遅れていた。このことから、キノコ遺伝子データベースの構築は、これからの発展につながる研究として期待できる。

 キノコ栽培では、味や食感などの優れた品種の開発に数年から数十年の期間が必要である。それが、味や食感などの遺伝子を特定することにより、開発期間を大幅に短縮し消費者ニーズへのスピーディな対応や一株当たりの収量増などの生産性向上、さらに人工栽培できないマツタケやトリュフなどの成長メカニズムを解明することにより、人工栽培化の確立の可能性がある。

 また、キノコの主成分グルカンには、がん化細胞に対し成長阻害効果があるとされているが、科学的な解明がなく薬効が特定できていない。

 この効果を遺伝子レベルで検証することにより、その効果についての科学的知見を得ることができ、薬効の特定ができると考えられている。

 このほか、キノコの遺伝子データベースが、キノコ産業以外の研究においても活用されることが期待される。  

 人間の細胞膜の一部には、脂質ラフトと呼ばれる構造があり、ここを入口としてウィルスの細胞への侵入・感染や、栄養、情報伝達が行われるといわれている。藤森氏等は、理化学研究所との共同研究で、この人間の脂質ラフトと特異的に結びつくマイタケの遺伝子を発見した。このマイタケの遺伝子を利用することにより、ウィルスの体内への侵入方法が解明でき、その侵入を防ぐための研究・開発に役立つと考えられる。

 このように、藤森氏等が構築したキノコの遺伝子データベースは、生産性向上、人工栽培化の確立のほか、医学活用に結びつく生体メカニズムの解明など多くの可能性を切り開く礎として評価できる成果である。


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