第一回 食の新潟国際賞 佐藤藤三郎特別賞 受賞者紹介
袁隆平氏は、中国におけるハイブリット米研究の創始者であり、異種交配による品種改良でハイブリット米を育成した世界的第一人者。世界では、ハイブリット米を中国の4大発明に次ぐ大発明と称賛する声もある。
袁氏が開発したハイブリット米は、人口増加による食糧需要の増加と、都市化・砂漠化等による耕地減少に伴う食糧供給の減少などを要因とする「世界の食糧問題」を大幅に改善するものとなった。
ハイブリット米誕生の背景には、1960年代はじめの中国で、飢えに苦しむ人々の存在があった。この飢えに苦しむ状況を目の当たりにした袁氏は、水稲こそが人々の命を救う食糧だと考えるようになる。そんなとき、通常よりもよく育った稲を見付けたことが研究のきっかけとなった。この稲が異品種間の雑種であることに気付いた袁氏は、9年の苦闘の末、1973年にハイブリット米の開発を成功させた。
このハイブリッド米は、それまでの「優秀とされていた米」に対して、20%の収量増加をもたらしたため、その作付地域は急速に拡大した。
袁氏は、開発当初の成功に満足することなく、国家のキープロジェクトを指導する主任研究員となり、多くの試行錯誤の末、1995年ついに新たなハイブリッド米の理論と技術の開発に成功した。これにより、それまでのハイブリッド米に比べ、さらなる収量増加と品質の向上を実現した。
1980年代から、日本を含む多くの国々がさらなる高収穫化を求めて動き出したが、中国でも1996年にスーパーライス交配計画を始めた。
これは二段階の目標設定で、第一段階は2000年までにヘクタール当たり8.5トンの収穫を10.5トンにすること、第二段階は2001年から2005年の間に12トンにするというものであった。
この計画は袁氏が進めることとなり、袁氏のチームは袁氏の作成したロードマップに従って新たな品種を開発し、第1段階目標を2000年に、そして第二段階目標を2004年に達成した。最近、第三段階の目標を設定し、2012年までにヘクタール当たり13.5トンを達成すべく奮闘している。
近年では、ハイブリット米は中国で生産される米の約60%を占め、7,000万人分の食糧増産となっている。また、袁氏は、中国国内だけでなく国際稲研究所(IRRI)や国連食糧農業機関(FAO)を通じて、アメリカを含む多くの国々や国際機関に対してハイブリット米を指導し、2,000人以上の研究者を育成してきた。近年では、ベトナムやフィリピン、バングラデシュ、インドネシア、パキスタン、エジプト、アメリカなどでも作付けされており、各国において食の供給の改善に大きな役割を果たすことによって、安全保障という観点からも世界に貢献している。